手島右卿記念室
「昭和の三筆」と称えられる現代書の先駆者・手島右卿。現代書道を語る上では欠かすことのできない超俗孤高の巨匠です。
手島右卿は1901年11月3日、高知県安芸市に誕生しました。
川谷尚亭、比田井天来に師事し、中国や日本の古典を徹底的に追及すべく厳しい鍛錬を積み重ね、あらゆる臨学・書法を会得しましたが、右卿は満足しませんでした。
東洋の哲理に則りながら現代人の美意識をも触発する書を―。
長きに亘る試行錯誤の末、ついに「象書」(文字の内容に相応しい形の書を創作すること)という造形性豊かな新しい様式美を確立したのです。
そして、象書作品の代表作「崩壊」(1957年)「抱牛」(1955年)が世界で高い評価を得ました。
その後も右卿は独創的で耽美的な代表作を制作し続け、国内外の人々に感動を与え続けたのです。
1987年3月、書に全てを捧げた右卿は、極めて霊性の高い書「神」(1974年)「鶴舞」(1985年)「以虚入盈」(1987年)を創作して86年の生涯を閉じました。
右卿が残した数々の名作は今、深い緑に囲まれた飛騨高山にある光ミュージアムの一室に飾られています。
右卿記念室では手島右卿の書業を顕彰するべく、若き頃から晩年に至るまでの主な代表作、資料、愛用の品々を展示しております。
日本語タイトル | 西暦 | 和暦 | 年齢 |
---|---|---|---|
山行 | 1948 | 昭和23年 | 47 |
背山臨濤 | 1949 | 昭和24年 | 48 |
道法自然 | 1986 | 昭和61年 | 85 |
自画像 | 1944 | 昭和19年 | 43 |
酌己 | 1965 | 昭和40年 | 64 |
弾琴 | 1955 | 昭和30年 | 54 |
落日 | 1960 | 昭和35年 | 59 |
玉関寄長安李主簿 | 1967年頃 | 昭和42年頃 | 66 |
頑石之中良玉隠焉 寒灰之中星火寓焉 | 1960年頃 | 昭和35年頃 | 59 |
江上三千里 | 1981 | 昭和56年 | 80 |
虚 | 1954 | 昭和29年 | 53 |
龍虎 | 1967 | 昭和42年 | 66 |
常楽我浄 | 1978 | 昭和53年 | 77 |
看雲孤客暮聴雨萬峰秋 | 1938年頃 | 昭和13年頃 | 37 |
憫農 | 1967年頃 | 昭和42年頃 | 66 |
南牛游北嶌 | 1967 | 昭和42年 | 66 |
龍鳳呈祥 | 年代不詳 | ||
崩壊 | 1957 | 昭和32年 | 56 |
圓月上寒山 | 1974 | 昭和49年 | 73 |
捫虱 | 1959 | 昭和34年 | 58 |
遅 | 1975 | 昭和50年 | 74 |
観 | 1963 | 昭和38年 | 62 |
大吉 | 1981 | 昭和56年 | 80 |
岳雲 | 1960 | 昭和35年 | 59 |
雲鶴 | 1955 | 昭和30年 | 54 |
散 | 1972年頃 | 昭和47年頃 | 71 |
潭 | 1983 | 昭和58年 | 82 |
沙 | 1965 | 昭和40年 | 64 |
灑 | 1981 | 昭和56年 | 80 |
無 | 1968年頃 | 昭和43年頃 | 67 |
革 | 1986 | 昭和61年 | 85 |
右卿は極めて長時間にわたって構想を練った。終戦間近の空襲のさ中、爆弾が落ちるのをみて、もののくずれてゆく、あのすさまじい迫力を、書に拠って表現できないものかと考えた。すさまじい破壊力、無残にくずれ落ちるコンクリートの建て物――言葉では言い表わすことのできない凄絶さに、くずれゆくものの美を感じたのだった。以来十数年間イメージをあたため、種々の試みの末ある時ふとできあがったのがこの作である。これはサンパウロ・ビエンナーレ展に書としては最初に出品されたのだが、その時の副審査長ペドローザ博士がこの作品を高く評価してくれた。漢字が読めない氏は「崩壊」という形から崩れゆくものの姿を感じ、その句が「崩壊」という文字であることに驚いていた。
『〝虚〟ができたのは、能を観たとき、(動中に静あり)と感じたことからであった。舞台で、足をトトン、トトンと踏んだとき、それがあまりにも静かで、宇宙の静寂を感じさせるものがあった。このときから私は〝虚〟字を選んで構想にはいり、筆意を錬ったわけである。そして発想の動機が足踏みの音であるから、線中の圧を利用して、音感たらしめようと苦心したのである。また「虚実相一体」の連想をも盛ろうと試みた。』(手島右卿)
草稿、未表装作品、文房四宝(筆・硯・紙・墨)、落款印
右卿記念室の観覧可能時間は10時~16時です。
展示替えやその他都合により、ご鑑賞いただけない場合がございます。
※料金は消費税込み。小学生未満は無料。
※光ミュージアムの入館料以外に、別途100円の入室料金が必要です。詳しくは下記の手島右卿記念室ご利用案内をご覧下さい。